社員のモチベーションアップのため、社内表彰制度を導入している企業は少なくありません。しかし、導入や運用の仕方を間違えるとかえって悪影響が出てしまうこともあるため注意が必要です。
この記事では、社員表彰制度を導入するメリット・デメリットから具体的な導入手順、さらに他社との差別化を図れるユニークな表彰アイデアなどをご紹介します。
「社内表彰制度」の定義
そもそも社内評価制度とは、従業員が何らかの功績を上げたり、会社の業績アップに貢献したりした場合、会社が主体となって評価する制度のことをいいます。一般的な人事評価とは違い、表彰の結果は広く社内に公表されるのが特徴です。
社内表彰制度を導入するメリット
社内表彰制度を導入することで、さまざまなメリットが期待できます。代表的なものは次の5つです。
- 社員のモチベーションアップ
- 部署や業務内容にかかわらず公平に評価できる
- 社員のロイヤリティ(愛社精神)が育つ
- 離職率の低下
- 理想とする社員像の浸透
社員のモチベーションアップ
社員にとって社内表彰がひとつの目標となり、前向きに日々の業務と向き合うことができます。選考基準や褒賞の内容を明確にすることで、より一層効果が見込めるでしょう。
部署や業務内容にかかわらず公平に評価できる
日々の業務の中には、一般的な人事評価制度ではカバーできない取り組みも数多くあります。「縁の下の力持ち」という言葉がありますが、数字で評価できない陰の行動が円滑な会社運営を支えているものです。
このような「誰かがやらなくてはいけない仕事」が評価されない状態は、会社のために献身的に働く社員ほど不満を抱える要因となってしまうでしょう。こういった業務を社内表彰で評価することで、潜在的な不満を解消し、会社への帰属意識や貢献意欲を保つことができます。
社員のロイヤリティ(愛社精神)が育つ
ロイヤリティ(愛社精神)とは、勤務している会社を愛する気持ちのことです。日々の業務に前向きに取り組むことができ、直接業績に関わらないような仕事も公平に評価される労働環境に身を置くことで、勤め先を愛し自分の仕事に誇りが持てるようになります。
離職率の低下
陰の努力も公平に評価され、日々の業務に前向きに取り組める環境を整えることで、やる気のある優秀な人材が流出するのを防ぐことができます。
理想とする社員像の浸透
社内表彰制度は、社員に対して「こういうことを頑張ると評価される」という方向性を示すものでもあります。社内表彰制度を利用すれば、全従業員に会社の理念やビジョンを共有でき、会社にとっての「理想の従業員像」を浸透させることも可能です。
社内表彰制度で起こりうるデメリット
社内表彰制度には多くのメリットがある一方、次のようなデメリットもあります。
- 運用コストの増加
- 社員間のコミュニケーションの悪化
- 不適切な運用によるモチベーションの低下
運用コストの増加
社内表彰制度は、定められた規定に則り、社員が納得できる公平性や透明性を保って選考を行わなければいけません。選考の準備・表彰式の実施・褒賞品にかかる費用など、少なからず運用コストがかかります。
社員間のコミュニケーションの悪化
社内表彰制度をきっかけに、社員間の競争意識が過剰に高まり、社員間・部署間でのコミュニケーションが悪化する恐れがあります。こういった事態を防ぐためには、表彰の選考基準や選考対象を吟味し、バランスの良い制度を設計しなければいけません。
不適切な運用によるモチベーションの低下
せっかくの社内表彰制度も、公平性や透明性が保たれていなければかえって社員の不満を募らせる要因となってしまいます。制度の導入時・運用時のいずれも、社員が納得できる公平性と透明性を保つように心がけましょう。
褒賞の種類と金額相場
社内表彰では記念品が贈られるのが一般的ですが、記念品の種類や金額相場は表彰の内容によって異なります。一般的には3,000~3万円程度で設定されていますが、永年勤続表彰などの大きな賞では金額も大きくなる傾向があるようです。記念品として贈られる品物は次のようなものがあります。
トロフィー等の置物
華やかなトロフィーや盾などの置物は「賞を取った」というイメージが伝わりやすいアイテムです。記念のメッセージや受賞の年月日を彫刻するとより特別感が生まれます。
ボールペンなどの実用品
高級ボールペンやモバイルバッテリーなど、公私共に使える実用品も人気です。会社のロゴマークや賞の名前を彫刻してもいいでしょう。
時計
永年勤続や定年退職など、時間に関する賞の記念品によく選ばれます。公私ともに使える腕時計からデスクで使える置き時計まで、時計の種類はさまざまです。
カタログギフト
もらった側が好きなものを選べるカタログギフトは、近年さまざまなギフトシーンで人気を集めています。同じ人でも時と場合により欲しい物は変わるため、幅広いジャンルを取り揃えたカタログを選ぶといいでしょう。
商品券・現金
現金や商品券は喜ぶ人が多い一方で「誰にいくら渡ったか」が公表されるため、部下やチームメンバーに“ご祝儀”として振る舞わなければいけない雰囲気が生まれがちです。せっかくの褒賞金を自分や家族のために使えないとなるとモチベーションの低下にもつながるため、使い道を周囲が強制するようなことがないよう十分に配慮しましょう。
社内表彰制度の導入手順
実際に社内制度を導入する際、留意すべき点がいくつかあります。導入手順とともにそれぞれ確認しておきましょう。一般的には次のような手順で進めていきます。
- 導入の目的と担当者を明確にする
- 表彰のガイドラインを決める
- 表彰を実施する
- 実施後にフィードバックを行う
導入の目的と担当者を明確にする
まずは「何のために社内表彰制度を導入するのか」を明確にしましょう。新しい制度を定着・継続していくには時間がかかるため、ノウハウを蓄積できるよう専門の担当チームを作るのもいいでしょう。社内のあらゆる角度に目が届くよう、チームメンバーは各部署からバランスよく選出することも大切です。
表彰のガイドラインを決める
毎回の表彰を一定の基準で行えるよう、選考期間や選考基準、褒賞の内容などを定めたガイドラインを作りましょう。手順1で決めた「導入の目的」に内容が即しているかを考慮しながら進めることが大切です。作成したガイドラインは社内規則に記載し、社員が誰でも閲覧できるようにします。
表彰を実施する
ガイドラインの作成が完了したら、規定に則って表彰を行います。表彰制度の周知徹底のためにも、表彰の日程や選考基準について社内報等で事前にアナウンスするといいでしょう。
実施後にフィードバックを行う
どれだけ熟考して準備したとしても、初めから非の打ち所がない制度が出来上がることはまずありません。表彰制度の実施までこぎつけたら、その後必ず社員からのフィードバックを取得するようにしましょう。フィードバックの内容を活かすことで、内容をブラッシュアップしたり、徐々に表彰の種類を増やしたりといった対策を検討することができます。
社員からの否定的な意見が目立つ場合は、表彰の選考基準や褒賞の内容が当初の目的に即しているか、実施スケジュールに問題がなかったか等を見直す必要があります。
社内表彰のアイデア10選
代表的なものから他社との差別化が図れるユニークなものまで、社内評価制度の具体的なアイデアをまとめました。企業風土や企業規模に合わせて、表彰制度を導入する際の参考にしてください。
勤続年数表彰
8割近くの企業が導入していると言われる、表彰制度の中でも最もスタンダードなものです。業務の内容や成果にかかわらず勤続年数のみに焦点を当てた制度で、定年退職者への表彰もこのタイプに分類されます。褒賞の内容は金品や記念品のほか、特別休暇の付与等が一般的です。
ピアボーナス制度
ピアボーナスとは「仲間(Peer)」からの「報酬(Bonus)」という意味の造語で、社員間で少額の報酬を送り合うのが特徴です。日頃の行動や貢献に対して、ともに働く仲間同士で評価しあうという新しい仕組みは、新たな報酬制度として注目を集めています。
ピアボーナス制度の報酬は月々の給与やボーナスに上乗せされることから「第3の給与」とも呼ばれます。
新人賞
入社1年目の新入社員を対象とした賞です。当事者のモチベーションアップにつながるのはもちろん、普段交流のない他部署の社員が新入社員のことを知る良い機会にもなります。
大失敗賞
失敗した社員やその事例を明るく取り上げることで、積極的なチャレンジをたたえる賞です。当事者の失敗が報われるのに加え「失敗を恐れず前向きにチャレンジしよう」という風潮を後押しします。
安全運転賞
無事故・無違反で安全運転を続けた社員に送られる賞です。社内の交通意識向上により、事故件数の低下が期待できます。5年や10年などの継続期間を設定し、年数に応じて褒賞を豪華にしてもいいでしょう。
ベストティーチャー賞
優れた育成担当者に送られる賞です。新人教育は重要な業務であるにもかかわらず、数字が重視される人事評価では公平に評価されないこともしばしば。社内表彰という形で評価することで、教育担当者の士気が上がります。
ベストクリーン賞
社内の清掃や美化活動に力を入れた社員を対象とした賞です。自分のデスクだけではなく、オフィス全体の清掃やプライベートでの清掃ボランティア活動などを選考基準にしてもいいでしょう。
ベストパパママ賞
育休制度をうまく活用して、仕事と子育ての両立を頑張っている社員に送られる賞です。社内での育休取得の促進になるのに加え、社外に発信することで企業イメージの向上にもつながります。
F-1グランプリ
ここで、弊社独自の社内表彰制度を一部ご紹介します。社名(株式会社FLEGRE)の頭文字を取り、某漫才コンテストをもじって誕生したのが「F-1グランプリ」です。
期内で上げた成果や業務改善の取り組みなどの「成功体験」を個人・チームごとに募集し、予選を通過した複数組がそれぞれ自由にプレゼンを行います。プレゼン後は全社員で投票を行い、最優秀賞および社員特別賞、審査員特別賞が決まります。毎年趣向を凝らした内容で、選考する側にとっても楽しみな社内の一大イベントです。
健康チャレンジ
社員の健康を維持し、業務でよりよいパフォーマンスを上げてもらおうと企画された制度です。期間中の睡眠時間で競う「睡眠チャレンジ」と、一日の平均歩数で競う「ステップチャレンジ」の2部門があり、チーム全体での成績と個人成績のそれぞれで選考を行います。
睡眠チャレンジは単純な睡眠時間の合計ではなく、各年齢層ごとに最適と言われている睡眠時間にどれだけ近いかという基準が設けられているのがポイントです。
自社に合った内容を考えて社内表彰制度を運用しよう
社内表彰制度は自由度が高く、他社の成功事例をそのまま取り入れても自社でうまく機能するとは限りません。内容が自社の企業風土や従業員の価値観に合致しているかを慎重に検討し、効果的に運用しましょう。